If you were not here,
a star’s light would never reach us,
a constellation would lose its shape,
and the night would forget one of its songs.
The universe itself would bear a tear in its fabric,
a silence where your note was meant to be.
That is why you are precious—
because without you, even infinity is incomplete.
例えばそこに あなた が いなかったとしたら
あなた の角度から見える景色が一つ無くなるわけで
この世界から あなた の音色が消えてしまう
地球に小さな穴があいてしまっては
球も球と言えなくなる・・・・・
だから大切なんだ
あなたが・・・
あなた ― Because You Are Here
消えようとした夜
その夜、彼女は自分が世界に必要のない人間だと、本気で思っていた。
駅のホームに立って、遠くの光をぼんやりと眺めていた。電車が来るたびに、その風圧が髪を揺らした。人々が流れるように乗り込んで、また夜の中へと消えていく。誰も彼女を見ない。誰も気づかない。それが、何よりも確かな証拠のように思えた。
「私がいなくても、何も変わらない」
その言葉が、胸の中でゆっくりと石になっていくのを感じながら、彼女はベンチに腰を下ろした。
あの人の口癖
幼い頃から、祖母はよく言っていた。
「星はね、一つ消えると、形が変わるんだよ」
縁側に二人で座って、夏の夜空を見上げながら。祖母の指が北斗七星の柄杓をゆっくりとなぞるたびに、その星座が何か生きているもののように感じられた。
「でも一つくらい消えても、わからないんじゃない?」
幼い彼女がそう聞くと、祖母は少し間を置いてから、静かに首を横に振った。
「わかるよ。星はね、お互いを知っているんだ。隣の星が消えると、自分の光の届き方が変わる。見ている人間には同じに見えても、残った星たちには、ちゃんとわかるんだよ」
その言葉の意味を、彼女は大人になるまで、本当には理解していなかった。
あなたの角度
午前三時のファミリーレストラン。
彼女の向かいに座った友人が、温くなったコーヒーを両手で包みながら言った。「あのさ、あなたって覚えてる?去年の春、私が会社辞めようとしてたとき」
彼女は少し首を傾けた。覚えていた。あのとき友人は泣きながら電話をかけてきて、彼女は特に何も言えなかった。ただ電話口でずっと「うん、うん」と聞いていただけだ。
「あのとき、あなたが笑ったんだよ」と友人は言った。「『そっか、辞めたいよね』って言って、くすっと笑った。その笑い方が、なんか、すごく良くて。責めるでもなく、励ますでもなく、ただ『そういうこともあるよね』っていう感じで。それで、なんか力が抜けて、続ける気になったんだよね」
彼女は思い出せなかった。そんな笑い方をした記憶も、そんな言葉を言った記憶も、薄かった。でも友人の目が、ちゃんとそれを覚えていた。
「あのとき、あなたがいなかったら、私はたぶん違う場所にいたと思う」
窓の外に、夜明け前の空が少しだけ白くなり始めていた。
地球の穴
翌朝、彼女は母親に電話した。
出掛けに少しだけ声を聞きたくなった。それだけのことだった。
母親は電話口で、昨夜の夕飯の話をした。誰かがあなたの好きな煮物を作って、思い出したと言った。それから近所の犬が最近よく吠えるとか、テレビで見た旅番組の話とか——他愛もないことを、少し遠慮がちに話した。
電話を切る前に、母親がぽつりと言った。「元気でね。あなたが元気でいてくれると、お母さんも元気でいられるから」
彼女は「うん」と答えて、電話を切った。
しばらく、手の中のスマートフォンを見つめていた。
あなたが元気でいてくれると、私も元気でいられる——そのたった一言が、あの夜の石を、少しずつ溶かしていくようだった。
誰かにとって、自分がいることが、何かを支えている。それは証明できないし、目に見えないし、大げさなことでも何でもない。ただ、確かにそうなのだ。
地球に小さな穴があいてしまっては、球も球と言えなくなる。
祖母の言葉が、急にそこへと繋がった。星が一つ消えると、隣の星の光の届き方が変わる——あなたがいないと、誰かの景色が、一つ欠ける。あなたの角度から見えていたものが、この世界から消えてしまう。
それは、宇宙規模の損失だ。
あなたがいるから
夜空の星は、自分が星座の一部だと知らない。
ただそこに在って、光っているだけだ。それなのに、誰かの指がその輪郭をなぞるとき、そこに形が生まれる。北斗七星も、オリオンも、あなたが知らないところで、誰かの夜を支えてきた。
あなたも、きっとそうだ。
自分では気づかないまま、誰かの景色の中に、静かに組み込まれている。あなたの笑い方が、誰かの踏ん張りになった夜がある。あなたの声が、誰かの朝を少しだけ軽くした日がある。あなたがそこにいるという、ただそれだけのことが、世界の形をちゃんと保っている。
無理に輝かなくていい。特別でなくていい。
ただ、そこにいてくれるだけで——あなたがいるというその事実だけで、この世界はひとつの穴を持たずに済んでいる。
Because you are here.
だから、大切なんだ。
あなたが。
