Long ago, this very star—
just like you—
once fell in love,
once wept its tears.
And now, it has been reborn
as this beautiful, blue planet.
So look—
there’s no need to be sad anymore.
この星も昔
君と同じように
恋をして
涙して
今では綺麗な青い星に生まれ変わったんだ
だからほら、もう
・・・悲しまないで
So hey… let the sadness go.
涙の結晶 ― So Do Not Weep
泣けなくなった日
彼は、泣き方を忘れていた。
失恋したのは秋の終わりだった。別れを告げられた夜、駅のホームで電車を待ちながら、泣こうとした。でも涙は来なかった。胸の奥に何か重いものが詰まっている感触はあるのに、それが外へ出てくる道を見つけられないまま、ただ電車に乗って、家に帰って、布団の中で天井を見つめた。
それから三ヶ月が過ぎた。
季節は冬を越えて、春の気配が街に漂い始めていた。桜の蕾が膨らんでいた。人々は少しずつ上着を脱ぎ始めていた。でも彼の胸の中だけは、あの秋の夜のままで、止まっていた。
老人と望遠鏡
その公園に初めて行ったのは、ただ歩き続けたかったからだ。
どこへ向かうでもなく、ただ動いていたかった。止まっていると、考えてしまう。考えると、また胸が重くなる。だから歩いた。気づいたら、丘の上の小さな公園に出ていた。
ベンチに、一人の老人が座っていた。
膝の上に大きな望遠鏡を抱えて、空を見上げている。夕暮れ時で、星にはまだ少し早い時間だったが、老人は空の一点をじっと眺めていた。
「何か見えますか」と、彼は気づけば声をかけていた。
老人は振り返り、しわだらけの顔をほころばせた。「金星が出てきたところだよ。明るくなってきた」
彼は隣のベンチに腰を下ろした。なんとなく、その場を離れる気になれなかった。
星の話
老人は毎晩ここへ来るのだと言った。
「若い頃から星が好きでね。目が悪くなってからは、望遠鏡が友達だ」
それから二人は、しばらく黙って空を眺めた。沈黙が苦しくなかった。老人の隣にいると、なぜか時間がゆっくり流れるような気がした。
「君は、泣いたことがあるかい」と老人が唐突に言った。
彼は少し驚いて、老人の横顔を見た。老人は空を向いたまま続けた。
「失ったものを思って、どうしようもなく泣いたことが」
「……泣けなくなったんです」と彼は正直に言った。「泣きたいのに、出てこなくて」
老人は小さく頷いた。まるでその答えを最初から知っていたように。
「そうか。それは、まだ抱えているんだな」
この星の話
夜が深まると、空が本格的に星を開き始めた。
老人は望遠鏡をゆっくりと空へ向けながら、ぽつりと語り始めた。
「この地球がね、昔はどんな星だったか、知っているかい」
彼は首を振った。
「灼熱の岩の塊だった。46億年前、この星は宇宙のかけらが衝突を繰り返して生まれた。火があって、嵐があって、何もかもが壊れる世界だった」
老人は望遠鏡から目を離して、夜空を素手で指さした。
「その頃、地球には水がほとんどなかった。でも彗星が飛んできて、氷を運んできた。その氷が溶けて、海になった。つまりね——」
老人は少し間を置いた。
「この星の海は、宇宙から落ちてきた涙でできているんだよ」
彼は、その言葉を胸の中でゆっくりと転がした。
「傷ついて、燃えて、何度も衝突されて。それでも時間をかけて、あんなに美しい青い星になった。今、宇宙から地球を見ると、涙でできた海が光って、どこよりも青く輝いているそうだ」
老人の声が、夜の空気に静かに溶けていった。
「痛みや涙は、消えてなくなるわけじゃない。形を変えて、何か美しいものになっていく。この星がそうだったように」
結晶
家に帰り着いたのは、深夜だった。
部屋の電気もつけないまま、窓の前に立った。都会の夜空は薄明るくて、星はほとんど見えない。でも雲の切れ間に、一つだけ、はっきりと輝く星があった。きっと金星だろうと思った。
彼は、彼女のことを思い出した。
初めて会った日のこと。笑い方のこと。好きだったコーヒーの飲み方のこと。最後に別れを告げられたとき、彼女の目が少し赤かったこと——彼女も、泣いていたのだと、今更気づいた。
そのとき、何かが胸の奥で溶けた。
ゆっくりと、静かに。秋からずっと石のように固まっていたものが、少しずつ崩れていく感触があった。
涙が来たのは、そのあとだった。
声もなく、ただ流れた。止める気にもなれなかった。流れるだけ流れたら、どこかへ行くだろうと思って、窓の外の金星を眺めながら、ただそのままでいた。
泣きながら、老人の言葉を思い出した。
この星の海は、宇宙から落ちてきた涙でできている。
だとすれば、今ここで流れているこの涙も、どこかへ行って、何かになるのかもしれない。海に落ちて、蒸発して、雲になって、雨になって、また誰かの大地を潤す。消えてなくなるのではなく、ただ形を変えていく。
涙は、結晶だ。
痛みが凝縮されて、時間をかけて、透明になったもの。
青い星のように
春が来た。
桜が満開になって、散り始めた頃、彼は再びあの丘の公園へ行った。
老人はいなかった。昼間だったから当然かもしれない。でもベンチに座って、空を見上げると、青い空がどこまでも広がっていた。
雲が一つ、ゆっくりと流れていく。
この空の青さの下に、海がある。その海は、かつて宇宙を漂っていた彗星の氷が溶けたものだ。星が傷ついた痕が、時間をかけて、あの深くて美しい青になった。
彼はゆっくりと息を吸った。
胸の中がまだ少し痛むのは、何かを本気で好きだった証拠だ。その痛みは消えなくていい。ただ、少しずつ、形を変えていけばいい。この星がそうしてきたように。
涙は、弱さじゃない。
本気で生きた人間が、本気でぶつかったときにだけ生まれる、透明な結晶だ。
So hey… let the sadness go.
だからほら、もう——悲しまないで。
