股関節唇損傷体験記 #8
股関節唇損傷のリハビリ
術後1日目から、リハビリが始まった。
1番寝ていたい時間に起こされ、使ったこともない松葉杖を使い、リハビリ室へ時間をかけて向かう。
たった20メートル位の距離だけど、
今日は、アリになった気分だ。
とても、とても遠く感じる。
そしてベッドに仰向けになり運動がスタートする。
「それでは足を上げて下さい!」
嫌、駄目だ、全然上がる気配がない。うんともすんとも言わないのだ。
昨日まで動かしていたはずの足の上げ方がわからない。
力が入らないし、何と言っても痛い。
股関節唇損傷のリハビリ
ここまで動かないのが、術後当たり前なのかどうかは、僕にわかるはずもなく、なんとか動かそうと必死だった。
人は失って初めて大切なものに気づく。
そういうものだといくら言われても、普段から自分に当てはめて、考えたりはしていないもので、何処か他人事で、やっぱり、無くなってからでしか気づけないのかもしれない。
愛すべき時間とは、当たり前の一日のことであり、
くだらない会話、つまらないと思える一日が、輝く一日の土台であるように、
ダイヤの原石はそこらかしこに散りばめられていて、それを探す人で日々溢れかえるこの世界。
皆、目の前の石ころには目もくれずに、遠くで噂になっている、宝が眠っているであろう、その山に群がるのだ。
そういうものだといくら言われても、僕らは気づかない。
気づかないことすら、なんだか愛おしく思える。
僕の足がスムーズに上がるようになるまでに、2週間くらいかかっただろうか?
動き始めるに連れて、動かない時の気持ちが薄れ始める。
何かを手に入れるには、何かを捨てなくてはならない、という話を聞いたことがあるが、
こうして僕はまた、忘れてしまうのだろうか?
人間が生きていく為に、必要だと身に着けた忘れるという技術、
だとしたら、それはそれで素敵だと思う。
リハビリとは
週に1回、月に4回リハビリに通う生活。
松葉杖は最初の2週間位でとれ、1ヶ月位でスムーズに歩けるようになった。
多分回復は早い方ではないか?
そして、そこから5ヶ月ゆっくりとじわじわ回復していく様子。
そしてまた、以前の当たり前に溶け込んでいく。
こうして、僕の、忘れるためのリハビリは、6ヶ月で無事終わりとなった。
リハビリとはきっと、
そういうものなのだと思う。
#1出会いの数だけ・・・ 物語の始まりはこちらから